特別警報ってどのくらい『特別』なの?
しかしながら、多くの報道にあるように多数の犠牲者が出てしまっています。
この事実を聞き、正直かなり勿体ない感がしてなりません。なぜ、特別警報が出ているのに避難できなかったのだろうかと。
(詳細な災害発生時刻の情報がないので、特別警報発表前に災害が発生していた可能性は否定できませんが…)
そこには、特別警報に対する認知度の低さも影響していると考え、『特別警報』はどのくらい『特別』なのか、今回は気象予報士として検討してみたいと思います。
(今回は大雨による特別警報について検討します)
特別警報は平成25年8月30日に開始され、現時点(平成29年7月8日)までの約4年間で7回発表されました。特別警報が発表された大雨と、その被害をまとめてみました。
特別警報 | 被害 |
2013年9月16日 京都府、滋賀県、福井県 | 死者6名(左記3県では2名)、行方不明者1名、負傷者143名 |
2014年7月7日~9日 沖縄県本島、宮古島地方 | 沖縄では床上浸水、防波堤の決壊・破損など(死者無し) 死者は愛媛・長野・福島で3名 |
2014年8月9日 三重県 | 被害なし |
2014年9月11日 北海道石狩、空知、胆振地方 | 被害なし |
2015年9月10日~11日 栃木県、茨城県、宮城県 | 鬼怒川の氾濫 死者14名(左記3県では8名)、負傷者80名 |
2016年10月3日 沖縄県本島地方 | 被害なし |
2017年7月5日 大分県、福岡県、島根県 | 死者10名以上 |
死者が出ているのは7回中3回です。
また、逆に記憶に新しい2016年の台風10号(岩手、死者21名)、2014年の広島(死者77名)、2013年の東京大島(死者37名)では、特別警報は出ていません。
さて、問題はこれらの結果をどう考えるかです。
特別警報が出ても必ず死者が出るほどの被害があるわけではありません。逆に特別警報が出ずとも多くの死者を出した大雨もあります。
しかし、特別警報には客観的な明確な基準があり、それに基づいて発表されています。先の岩手、広島、東京大島ではその基準を満たさなかったため、発表がされませんでした。
つまり、特別警報はそれらの大雨をさらに上回る大雨が予想される場合に発表されるということです。
(厳密には持続時間や範囲などの基準が加わりますが、詳細は割愛します)
よく報道では『数十年に一度の、これまでに経験したことのないような、重大な危険が差し迫った異常な状況です』とされていますが、具体性がなく今一ピンとこない方も多いのではないかと思います。しかも、数十年に一度のはずなの毎年のように発表されています。これは、あくまでも『その地域で』ということなので、日本全国を見ると年に1~2回起こるというからくりです。
気象庁の警報は、『オオカミ少年』になりやすいのですが、『特別警報』は過去に死者を多数出した災害よりもさらに大きな災害が予想される場合に発表される重大な警報です。これはしっかり理解しておきたいものです。
Comment
本文にも述べているように、特別警報が出ていなくとも災害は起こっており、特別警報が出ていないから安全と思ってはいけないということです。
また、特別警報の範囲は基本的に都府県ごとに行われていため、範囲が広すぎるとの指摘がありました。その県民すべてが避難の対象となるのか、ということです。この点については、昨日(平成29年7月7日)より、その範囲は市町村ごとに変更となっており、改善されています。
これでもまだ市内全域が避難する必要があるのかという疑問が残りますが、ハザードマップを一度確認し、少なくとも洪水や土砂災害の危険区域に入っているのであれば、避難することを強くお勧めします。
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